資料は「全部まとめて」ではなく、開示段階ごとに整える
M&Aの資料準備は、最初から社名や取引先名を含む詳細資料を全候補へ渡す作業ではありません。初期検討では匿名概要と概算数値、秘密保持契約の締結後は事業・財務資料、基本合意後は契約・労務・許認可の根拠資料というように、候補先の検討段階に合わせて開示範囲を広げます。資料名、対象期間、更新日、担当者を一覧にすると、古い版の混在や誤送信を防ぎやすくなります。
三業種に共通する基礎資料
- 直近3期の決算書、勘定科目内訳書、月次試算表
- 売上上位先・仕入上位先の構成と契約更新時期
- 従業員一覧、資格・技能、勤続年数、採用状況
- 主要な設備、車両、不動産、リース契約の一覧
- 許認可、保険、事故・クレーム、係争の管理表
製造業は設備だけでなく、工程と顧客認定を説明する
設備台帳には取得年、簿価、稼働率、修繕履歴、更新予定を付けます。加えて、主要製品の工程表、不良率、外注工程、金型・図面の権利関係、顧客監査や認定の更新条件を整理すると、買い手は売上の継続性と追加投資額を分けて評価できます。
建設業は資格者・施工実績・原価管理を結び付ける
建設業許可の業種、経営事項審査、技術者資格、配置状況、工事台帳、未成工事、受注残を同じ基準日でそろえます。資格者が退職した場合の影響や、代表者個人の人脈に依存する受注を明示することで、引継ぎ計画を具体化できます。
物流業は契約採算と運行体制を拠点別に見る
荷主別売上だけでなく、運賃改定履歴、燃料費・外注費を含む契約採算、車両年式、整備履歴、ドライバー構成、倉庫稼働率を拠点別に整理します。WMSや配車システムの契約名義、データ移行条件も、クロージング後の事業継続に直結する確認項目です。
資料一覧は「未整備」を隠さず、対応方針まで記録する
不足資料があること自体より、質問への回答が変わることや、誰も所在を把握していないことの方が信頼を損ねます。未整備の項目には、代替資料、確認担当者、回答予定日を記載してください。資料の棚卸しは会社を良く見せるためではなく、買い手が事業継続リスクを同じ前提で比較できる状態を作るために行います。